CATMAN

 かつてネット文化として花開いたFlashの黄金時代。概ね1998年からマクロメディアがAdobeに買収される2005年まで……と考えられているらしいが、俺も大体そんな認識だ。
 今回感想文を書く「CATMAN」はそんなFlash黄金時代の全盛期に公開され、当時のFlashに触れていたのならまず知らない人は居ないであろう有名なオリジナル作品。
 一言で評すなら、「CATMAN」という擬人化した猫が織りなす(スタイリッシュ、クール、ハードボイルドなど色々形容されるが)日常を描いたショートアニメーション集。
 個人的にはまさかのTV放映とDVD化の発表に狂喜した物だが、世間一般の認知度は思いの外低く「時代が違うのか」と驚愕した物だ。そんなこんなで思い出たっぷりに感想文書くよ。

■DVDとオリジナルの違い

 CATMANには大まかに分けて四つの種類が有り、制作者は一貫して青池良輔氏なのは変わらないが、最初期の「シリーズ1」。シリーズ1からさほど時間を置かずに公開された「シリーズ2」。2007年に公開された「シリーズ3」。そして特典やPVや裏作品など混沌とした「番外編」。
 今回のDVDにはそれら四種類のほとんどが収録されている。
 ほとんど、と言葉を濁してるようにぶっちゃけカットされている要素はある。大きな物としてはまず、「シリーズ1」と「シリーズ2」のオリジナルに付属していたボーナスゲーム。
 これに関してはFLASHの双方向性を活かしたオリジナル故の要素だったため、DVDに収録するという段階でカットされるのは目に見えていた。まぁ当時を知る人のみのお楽しみと考えれば、それもありだろ? という気もする。反面、それを表現しようともせずコンテンツを食い潰すだけのフジテレビとかいう害虫は腹斬って詫びろとは思うが。
 それは兎も角、カットされているもう一つの要素は「裏CATMAN」と呼ばれる有名な作者降臨を切欠に世に出たまさしく異端の存在。その「裏CATMAN」にも1と2があり双方ともかなりはっちゃけているため、収録して欲しかったが……まぁ出来るわけねーよな。納得のカット。
 他には細かい事だが、字幕の表示形式が変わっていたり、解像度変更によるタイトル表示などが変わっていたりするため、オリジナルを知っている人には少々違和感あるかもな。
 裏を返せばそれ以外は完全版と言ってもいい内容。フルボイスバージョンという(個人的にはどうでもいい)のも収録されてるし、CATMANIAは必携と言われる訳だよ。

■シリーズ1

全てはここから始まった。
全てはここから始まった。
 個人的には一番好きなシリーズ1。
 なんとトラックパッドで描いていたと言うんだから、まったく驚きだよ。
 全編解像度の関係である程度手直しされてる感が半端無いが、まぁそれもありだろ。
 好きなのは「CATMAN SHOOTS.」と「CATMAN KICKS.」。「CATMAN JUMPS.」と「CATMAN…」は別格なのでノーカンな。
 やはりCATMANを見るならば、ここから見るのがオススメという感じ。
 今でこそ個人でもハイクオリティのアニメーションが作れる世の中となってるけど、当時のPCスペックなどを考えると、限られた中での試行錯誤が見えてとても勉強になる。
 これからFlashでアニメを作るって人には、そういう意味でもオススメ。
 まぁそういう抜きにしても、取り敢えず見たほうがいい。という気はするな。

■シリーズ2

マジチェーンスモーカー。
マジチェーンスモーカー。
 一番好きなのは「CATMAN & WIND.」。
 それ以外は……ちょっと、個人的には微妙という位置づけになっている。
 まぁCATMANの中でもダウン期というか、葛藤期というか、その辺がクローズアップされてるせいか、今イチピンと来ない。
 いや悪いわけじゃない。要するに「俺の好みではない」というだけ。
 寧ろシリーズ2最高だろうが! という人も居るだろうしなぁ。周りにCATMAN好きが一人しか居ないし、よく分からんね。
 一応、主題としては「自由とは何か」という割とありふれた物になるのかな。
 孤独と引き換えであるとか、理性のみが人間を自由にするとか、自由は弱者には耐えらるものではない故に強くあれであるとか、色々言葉にはされているが……恐らくその辺もひっくるめて自分で決めろって話だろうな。
 言わば「選択」と「決断」こそが自由を決する。それが逃避とは違う形の自由だ。
 ……なんつってな。

■シリーズ3

しれっとセルフパロ。
しれっとセルフパロ。
 時間を隔てた分、大幅に変化したシリーズ3。CATMANっていうかDOGMANだよね、と揶揄されてた覚えがあるな。
 まぁそれは兎も角、吃驚する位画像が綺麗になり、もはや昔の荒削りっぽい部分はすっかり見えなくなった。
 従来のシリーズとは違うのは、画像だけでなくタイトルの命名則も違う。これまで「CATMAN ○○」だったのが、普通のタイトルっぽくなっている。まぁこれは主役格がCATMANだけではないという事を意識しているのかも知れないなぁ。
 と言う訳で、大きく違う点としてシリーズ3から準主役とも言えるチーズ屋(とは名ばかりのギャング)の黒猫が登場する。彼は言わばCATMANと対比されるキャラ。
 色々進化していて、一頻り感動した後はまぁ正直1と2の焼き直し感が見えてきて……見た目は良くなったが、肝心の芯が弱くないか? というどこぞのゲーム業界のようなアレに。
 いや悪くはないんだ。新規参入にはいい扉かも知れんし。
 ……でもなぁ、なんかちょっと、モニョるよね。まぁ、それもありだろ?

■番外編

ソフバンのCMになったアレ。
ソフバンのCMになったアレ。
 特典映像に入ってるのはこれまでその名の通り特典扱いだったエピソードや、PV、ソフトバンクのCMに使われてた奴の改変版。そして青池良輔氏のインタビュー。
 まぁ正直、一番楽しみだったのは見た事の無かったエピソード「CATMAN AND MUSE」と「SECRET OF THE RED TIE」。
 そして予想外で吃驚したのは、シリーズ3エピソード0のflaファイル。つまりFlashを持ってると中身開けて色々解説が読めるという制作者にとってはとても有り難い代物。
 まぁ俺は当時Flash未所持だったから、よくわからなかった。けど、今はFlashCS6が手元にあるからね! 中身開けて色々吃驚! まぁぶっちゃけた話Flashとか全然弄ってなくて「なるほど、わからん」状態なんだがな!
 いや、しかし、まぁ、これはいい切欠になるとは思うよ。Adobe様のソフトを全て使いこなせる日は来るのか? と若干不安にはなっているが、取り敢えず手を出してみなければ分かるまい。つーか買ったからには弄り倒せよってな。

■まとめ

 総評としては、CATMANIAは必携。
 そこそこ好きな人も必携。興味が無くても必携……は言い過ぎか。
 まぁでも、Flashでアニメーション作りたいなーという人は持っていても損は無いんじゃないかな。つーか単純な娯楽としても、有りなんだから買っておこうぜ。
 信者補正抜きにして、真面目に書くなら「Flashアニメーション作りたいなー」程度の動機では買わない方がいい。それなら教則本買った方が余程有益だろう。
 だが、「CATMANみたいな雰囲気取り入れたいなー」と思うのなら持っておいた方がいい。
 勿論、単純にショートアニメ見たいって動機でも有りだ。
 つーか気になったならとやかく考えず買っちゃってもいい。それもありだろ?

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